読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

横井晃子の日記

このブログは、主に私が学んでいるビジョン心理学についての体験や学んだことをコンテンツとしたものです。このブログの内容は私の理解に基づいて書かれたものであり、 VDIやその他のビジョン心理学のトレーナーや組織には一切の責任はありません。

長谷川 眞理子先生の講演を聴いて(1)‐心の共有とは何か?‐

心と科学
5月27日 日本文化人類学会 第50回研究大会 記念シンポジウム「人類の道徳性と暴力性をめぐって-近接諸科学との対話-」を聴いてきました。そのなかの「他者を感じ、理解する心の進化的基盤」という長谷川眞理子先生の講演が非常に面白かったので、学んだことや考えたことをここに書き残しておこうと思います。
 
長谷川先生のご専門は行動生態学で、人間行動の進化学の研究が特に有名です。テレビにもよく出ておられるので、ご存知の方が多いと思います。
先生は、まずご自分の来歴を交えつつ、人間行動の進化研究の発展について述べられていました。
そのなかで一つ詳しくご説明されたお話に、こんなことがありました(正確な言葉は違っていると思いますが)
 
2、3歳くらいの小さな子供が犬を見て嬉しそうに「ワンワン!」と言う。そうすると、母親はそれを見て「そうね、ワンワンね」と言って子供に微笑みかける。子供は母親をみて、また嬉しがる。この一連のやりとりが、人間にはとても楽しいことなんです。
 
このやりとりのなかにはとても複雑な心の動きが含まれているそうです(言葉で説明するのが難しい!)
 
1)子供が犬を見て、犬だと思う。
2)それを母親に伝える。母親は、「子どもが犬を見ているな」とわかり、子供に「そうね」と返す。
3)子供は「母親も犬を見て、犬だ思った」ことが分かり、さらに「自分(子ども)が犬だとわかったこと」も母親は理解していることが分かる。
 
子どもがこのように3重の入れ子になった構造(「子どもが犬を見て犬とわかった」ことを母親がわかったことを子供が分かる)を理解できないと(もちろん母親も理解できないと)、共感は生まれないのだそうです。

f:id:yokoinmakiko:20160604131416j:plain

 
このような3重の入れ子の構造(三項関係表象)は、チンパンジーには理解できない(チンパンジーは類人猿の中で最も人間に近い)ので、共感と言うものはチンパンジーにはないのだそうです。
実際、類人猿には「なぐさめ(傷ついた心を思いやる行動)」というものは、存在していないと思っていますと、長谷川先生はおっしゃっていました(順位を落とされたリーダーのオスの肩に下位のオスが手を置く行動は、逆の順位では起きないから、それはなぐさめではないだろう、とのこと。)
 
長谷川先生は、この3重の入れ子構造のことを
私は、あなたが私がそれをわかったことをわかったことがわかる
と、ユーモアを交えて表現しておられました。
そして、このレベルのエージェントが集まると、教育、言語、などが自然発生的につくられるのだそうです。
 
2へ続く